Salons Blog

美容師の独立、『なんとなく』で店を出せる時代は終わった。【後編】──夢を「事業計画」に変えられる人が生き残る時代

Salons Blog

前編では、金利、物価高騰。

美容師やビューティシャンが独立するために必要なコストが、5年前とは明らかに変わってきているという話を書きました。

では、「もう路面店は出さない方がいいのか?」

という話ではありません。

明確な目的があるなら、今でも路面店には大きな可能性があります。

でも逆に、

「なんとなく自分の店が欲しい」だけなら、今はおすすめしません。

昔とはリスクが違うからです。



個室サロンでも、独立の仕組みはいろいろある

見た目は同じ完全個室でも、

「施設を利用する利用契約」
と
「店舗を借りる賃貸借契約」

では、考え方が違います。

施設利用契約には、決済、予約、売上管理、設備などを一つのプラットフォームで利用できるメリットがあります。

すぐに管理まで全部自分で行うことに不安がある人にとっては、便利な仕組みだと思います。

一方、THE SALONSが目指しているのは、

自助自立型です。

THE SALONSはビル側から転貸について承諾を得たうえで、入居者と不動産賃貸借契約を締結します。

  • 自分のカード決済会社を選ぶ。
  • 自分の売上として管理する。
  • 自分の事業としてサロン経営する。

必要な行政上の手続きも、自分の店舗事業者として整えていく。

法人契約なら法人の事業拠点として使うこともできる。

どちらが良い、悪いということではありません。

どこまで自分で経営したいのか。

ここで選ぶ仕組みや契約は変わります。

僕たちがTHE SALONSでつくりたいのは、

一人の店舗事業者として、自分の力で経営していける環境です。




なぜTHE SALONSは個人と法人で契約条件を変えているのか?

THE SALONSでは、個人契約と法人契約で解約条件を変えています。

個人契約では、基本的に6ヶ月前に申告すればペナルティーなく退去できる仕組みがあります。

一方、法人契約では、解約条件の賃料相当額を支払うことで即時解約できる条件を設けています。

一見すると、

「個人契約の方が得じゃない?」

と思うかもしれません。

でも、これは契約の目的が違うからです。

法人契約では、条件を満たせばTHE SALONSの区画を法人の事業拠点として使用し、法人登記を行えるようにしています。

つまり、

会社として事業を行う場所を借りる契約です。

その住所を法人の所在地として利用できる以上、貸す側にも一定の管理責任とリスクがあります。

そのため法人契約には一定のリスクヘッジを設けています。

逆に個人契約は法人登記を前提としていないため、より身軽に挑戦できる設計にしています。

簡単に言えば、

個人契約=まず自分のお店を持って挑戦するための契約。

法人契約=会社として店舗を構え、信用を積み上げ、事業を成長させていくための契約。

この違いです。



なぜそこまで「賃貸借契約」にこだわるのか

理由の一つは、その先の事業成長です。

独立した後、

もっと大きな店舗を出したい。

スタッフを増やしたい。

2店舗目を出したい。

法人化したい。

そうなった時に、金融機関との付き合いも始まります。

そして今は、銀行も以前よりさらにシビアに事業を見るようになっています。

金利も上がり、内装費も高くなり、事業環境そのものが厳しくなっている。

当然、金融機関も、

「本当に返済できるのか?」

をより細かく見ます。

金融機関が見るのは、

Instagramのフォロワー数だけでも、

「月商500万円!」というストーリーズだけでもありません。

  • どんな場所で事業をしているのか。
  • どんな契約を誰と締結しているのか。
  • どんな売上と利益を積み上げてきたのか。
  • 自己資金はいくらあるのか。
  • 返済原資はどこなのか。

そして、なぜ、その出店が必要なのか。

そうした事業実態の積み重ねが大切になります。

だからTHE SALONSは、日本政策金融公庫を含めた金融機関とのパイプが有り、相談や紹介も行っています。

最初は小さな個室サロンから始める。

そこで事業者として実績をつくる。

そして数年後、

「次は路面店を出したい」

となれば、次のステージに進んでもらう。

それも一つの成功だと思っています。


路面店を出すなら、「売上構造を変えられる理由」が必要

今の時代に路面店を出して伸びる人は、

単純に「席数を増やしたい人」ではないと思っています。

大事なのは、

出店することで売上構造や利益構造を変えられるか。


例えば、

新しい高単価メニューを導入できる。

スタッフを増やして売上を拡大できる。

物販を強化できる。

法人や企業との事業契約がある。

新しい顧客層を獲得できる。

こうした明確な理由がある人は強い。

逆に、

今の月商をそのまま大きな箱に移して、

家賃だけ上がる。

返済だけ増える。

人件費だけ増える。

これはかなり危険です。

「店を大きくしたら売上も上がると思います。」

という事業計画では、

僕なら怖くて出せません。

“頑張る”は事業計画ではありません。


「単価を上げればいい」も、そんなに簡単ではない

出店後の計画でよく聞くのが、

「単価を上げる予定です。」

という話です。

もちろん単価アップは大切です。

でも、

1万円のメニューを1万3,000円にしたからといって、売上が自動的に30%増えるわけではありません。

お客様が減れば意味がない。

だから重要なのは、

値段を上げることではなく、付加価値を上げることです。

技術、専門性、接客、空間、サービス、体験

お客様が「高くなっても、この人にお願いしたい」

と思ってもらえる理由を作れるか。

出店と同時に客単価を上げられるメニューや事業契約がある人は伸びると思います。

でも、単純な値上げだけでは失客する可能性もあります。

物価高の時代は、お客様だって財布を見ています。

高い店が残るのではなく、高くても価値を感じてもらえる店が残る時代です。


THE SALONSの仕組みも同じ考えです。

オープンした瞬間から、

家賃、広告費、材料費、カード決済手数料、その他経費

すべてが一気に出ていけば、手元のキャッシュは減ります。

独立直後こそ、余力を持ってほしい。

集客に使ってもいい。

材料を揃えてもいい。

生活防衛資金として残してもいい。

経営者にとって、最初の武器は豪華なサロン内装よりキャッシュです。

これは何度でも言いたいところです。


美容業界にも、もっと「比較する文化」があっていい

僕は美容業界には、もっと契約や金融について比較する文化があっていいと思っています。

美容師やビューティシャンは技術やSNSの比較にはすごく詳しい。

薬剤の違い。

カット技術の違い。

SNSの見せ方の違い。

ここは本当に勉強します。

でも独立になると、

「初期費用0円」

「すぐ独立できます」

「全部用意されています」

という分かりやすい言葉だけで判断してしまうことがある。

それぞれのサービスには、それぞれのメリットがあります。

だからこそ、

  • 総支払額はいくらなのか。
  • 途中解約条件はどうなっているのか。
  • 設備は誰の所有なのか。
  • 売上管理はどうなるのか。
  • 決済会社を選べるのか。
  • 法人登記できるのか。
  • 契約終了後に何が残るのか

ここまで比較して、自分に合った独立方法を選んでほしい。

契約、金融、税金、不動産、キャッシュフロー

面倒です。

美容師ならカラーの薬剤選定、
アイリストならデザイン、
ネイリストなら新しいアートを考えている方が楽しいと思います。

でも、独立したらこれも全部、自分の事業です。


金利より怖いのは、「自分がいくら払うのか分からないこと」

今回、一番伝えたいのはここです。

日本政策金融公庫で1,500万円を年4%で借りたとします。

高くなったな、と思います。

でも数字は見えています。

元金、金利、毎月の返済額

5年なら利息約152.5万円。

7年なら約212.5万円。

全部計算できます。

逆に怖いのは、

契約期間中に総額いくら払うのか、自分でも分からない状態で契約することです。

「利用料」「リース」「売上歩合」

大切なのは、

最終的に自分はいくら払い、その対価として何を得られるのか。

ここです。

そして店を出すなら、

なぜ出すのか。

いくら売るのか。

どう単価を上げるのか。

どう付加価値を作るのか。

借入を何年で返すのか。

売上が落ちても耐えられるのか。

ここまで考えて初めて、事業計画だと思います。

夢を持つことは大切です。

でも今は、

夢を実現するために、夢を数字へ変える必要がある時代です。


「たぶん大丈夫。」

「何とかなる。」

「売上は後から上げます。」

そんなアバウトな経営を続ければ、物価高、家賃高、金利高が一気に経営の弱点を突いてきます。

これからの美容師・ビューティシャンの独立に必要なのは、

勢いより計画。

見栄よりキャッシュ。

広さより利益。

そして、

「お店を持ちたい」より、「なぜお店を持つ必要があるのか」。

美容師やビューティシャンの独立で本当に必要なのは、一番安そうに見える方法を探すことではありません。

数字と契約を理解して、自分に合った方法を自分で選べること。


それが自立だと思っています。

THE SALONSが目指しているのも同じです。

自分の店。

自分の売上。

自分の契約。

自分の信用。

そして、自分の判断。

THE SALONSの中で事業者として経験を積み、

次のステージに進みたくなれば卒業する。

それでいい。それがいい。

美容師やビューティシャンが、自分の人生と事業を自分で選択できる経営者になってもらう。

それがTHE SALONSの考える本当の独立支援です。


────────

THE SALONS Japan株式会社
代表取締役/現役美容師/宅地建物取引士
清水 秀仁

Salons Blog の一覧へ戻る

LINE